高齢者の栄養不足に要注意!介護を遠ざける食べ方のコツ

介護の仕事

食卓に並べられたおかず

高齢になれば誰もが、若いときと同じようには食べられなくなってきます。しかしそれを「年だからしかたない」と放置するのは禁物。高齢者にとって栄養が不足することは、想像以上に深刻な影響をもたらしてしまうからです。年だからこそ、若いときより栄養状態に気を付けバランスよく食事をとる必要があるのです。

今回は、高齢者が低栄養になるとどんな悪影響があるのか、気になる症状や低栄養を防ぐ食事のコツ等をご紹介。食べられる量が減ってくるほど、ちょっとした工夫や配慮が大切になります。ぜひ参考にしてみてくださいね。

高齢者が栄養不足になりやすい理由

ひとりで食事を摂るシニア女性

高齢になると消化能力をはじめ、味覚や噛む力が衰え、若い頃のように食べられなくなってきます。あまり体を動かさないため食欲もわかず、1食の量が少量になったり1日2食になったりと、食べる量が減ることが栄養不足になりやすい一番の理由です。

また体の痛みや不調から食事の用意がおっくうになったり、米や野菜、牛乳など重たい買物ができない、調理が苦手、経済的に困っている、といった場合もあります。そうなると手軽に買えるコンビニ弁当や簡単に調理できる即席麺、軽くて買物が楽な菓子パンなどのメニューが増えてしまい、タンパク質やビタミン・ミネラル、食物繊維といった栄養が不足しがち。

それ以外にも、配偶者や友人、ペットとの死別など、精神的なショックから食欲がなくなってしまったり、飲んでいる薬の副作用で食事がとれなくなることもあります。最初のきっかけは一時的な食欲不振でも、ガクンと痩せて体力が落ちることで運動量が減り、さらに食欲がなくなっていくという悪循環にはまりこんでしまうことも。

高齢の体は、食事で摂る栄養が足りない場合、自分の体の筋肉をアミノ酸へ分解してエネルギーを作り出そうとします。栄養が不足した分だけ、体を動かす重要な筋肉が減っていき「サルコペニア」と呼ばれる状態になることも。

サルコペニアになると、歩くのが遅くなったり疲れやすくなったりと、安心して自立した生活を送ることが難しくなってきます。ふらついて転倒や骨折など大きなケガをすれば、入院してそのまま寝たきりになってしまうことも珍しくありません。高齢者にとって食事をおろそかにすることは、要介護へとつながりかねない危険なことなのです。

低栄養のおもな症状

栄養が不足した体は、生きるためのエネルギーや、傷ついた体を修復する材料が足りていない状態。ちょっとした病気やケガに対しても抵抗・回復する力が弱まっています。低栄養のおもな症状をみてみましょう。

・体重が減少する
・筋肉が減少する
・食事量が少ないため脱水になりやすくなる
・免疫力が下がって感染症にかかりやすくなる
・傷や褥瘡(じょくそう)が治りにくくなる
・血管が弱くなり動脈硬化を起こしやすくなる

ただでさえ加齢により体の機能が衰えている高齢者にとって、病気やケガのリスクを高める低栄養はとても厄介。しっかり対策し、回避していきたいところです。

栄養不足を防ぐ食事のコツ

卵、大豆、乳製品など、タンパク質を多く含む食品たち

手軽にできるタンパク質アップ術として、「味噌汁に豆腐を入れる」「朝ご飯に納豆や卵、チーズやヨーグルトを添える」「食後に牛乳を一杯飲む」などはおすすめです。本人の食生活や好みに合わせるようにすると継続しやすいでしょう。

もうひとつ重要なのは、炭水化物ばかりに偏らず、いろいろなものをバランス良く食べる「多様食」であること。献立を考える際には、摂りたい食品の頭文字をつなげた「まごわやさしい」という言葉を参考にするのもおすすめ。これに「よ=ヨーグルト(発酵食品)」を付け加えた「まごわやさしいよ」という言葉もあります。

ま=豆類
ご=ごま
わ=わかめ(海藻類)
や=野菜
さ=魚
し=しいたけ(きのこ類)
い=いも類
よ=ヨーグルト

入れ歯のフィット感も大切

高齢の方は総入れ歯や部分入れ歯を使っている人も多いもの。しかしそれらが安定せず、歯肉に当たって痛んだりすると、どうしても固いものを避けがちになります。食べやすい柔らかいものばかりを食べていると、炭水化物や菓子類が増え、代わりに栄養をたっぷり含んだ肉や野菜が不足しがちになってしまいます。

口の中の状態は年齢によって変化していくため、作った当初はぴったりでも、その後合わなくなってくることがあります。入れ歯が当たって痛い、ガタガタする、外れやすい、壊れたなどのトラブルがあるなら、放置せずすぐに歯科医院で調整してもらいましょう。

よく噛めないことは栄養不足に陥る大きな要因のひとつ。義歯でもフィットしていれば問題なく噛むことができるので、適切な手入れをしながら活用していきましょう。

「運動」も重要な低栄養対策

外でタオルを持ってストレッチするシニア男女

一見「運動」は食べることと関係ないように感じるかもしれませんが、実は深い関係があります。というのも栄養不足になる高齢者は、「動かないからおなかが空かない→おなかが空かないから食べない」という流れになっていることが多いから。そしてその流れの行き着く先は、「低栄養→要介護」ということもまた多いのです。

「動いておなかが空く→しっかり食べる→筋力が維持される→元気で活動できる」というループに入っていくために、運動は外せない要素です。日頃からウォーキングやスクワットといった軽い運動を取り入れたり、家事や趣味などで体を動かすようにしましょう。

また買物でも通院でもよいので外出する機会をなるべく多く持ち、「閉じこもらない」こともとても重要です。

「よく食べよく動く」が健康長寿の秘訣

一緒に食事を摂るシニア夫婦のようす

ご紹介してきたように、老年期をイキイキ元気に過ごすためには、「よく食べよく動く」ことがカギになります。低栄養になりやすいのは「閉じこもりがちで粗食」の高齢者。逆に「活動的でよく食べる」人は栄養状態がよく、体をよい状態に保つことができるのです。

ところが高齢者のなかには、「動かないのに食べたら太ってしまう」と考えて食べる量を減らしている人や、「コレステロールが心配だから肉は避けている」「粗食の方が健康になれる」と信じている人もいます。

しかし最近の研究では、「少し太めの人」や「少しコレステロール値高めの人」の方が健康寿命が長いことが分かってきました。逆に痩せている人の方が死亡リスクが高く、余命が短いのだそうです。そうと分かれば安心して、おいしく肉や魚、卵などをいただけそうですね。

高齢者こそタンパク質を筆頭に多様な食品を食べつつ、できるだけ体を動かす。この2つの合わせ技で低栄養を払拭し、介護を遠ざけていきましょう!

※参考資料:「高齢者の栄養問題―健康日本21(第二次)の視点から―」
(東京都健康長寿医療センター研究所 社会科学系副所長 新開 省二)

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