在宅介護に欠かせない!レスパイトケアの目的と方法とは

介護の仕事

車いすを押す女性の後ろ姿

「レスパイトケア」とは、ふだん在宅で介護を担っている家族など介護者の方に、休息をとってリフレッシュしてもらうための支援のこと。レスパイト(respite)はもともと「小休止」や「休息」などを意味する英語で、この言葉は介護分野だけでなく育児や医療、障がい者ケアなどの分野でも使われています。

「レスパイト=休息」がないと、介護者が体力的・精神的に追い詰められ、在宅生活が続けられなくなってしまうことがあります。プロの力を借りて適度に息抜きすることで、介護を受ける側も介護する側も長く快適に、在宅生活を続けていくことができます。

それではさっそく、レスパイトケアの目的から具体的な支援方法、上手な活用法などについて、下記で詳しく見ていきましょう。

レスパイトケアの目的

冒頭でお伝えしたように、レスパイトケアの目的は、在宅で介護している家族などの介護者に休息をとってもらうことです。介護者がいつもしているケアを一時的に代替することで、ケアから離れる時間をとってもらい、心身共にリフレッシュしてもらうのが狙い。介護を受けている本人ではなく、その介護を担っている人を助け、支援するためのケアとなります。

とはいえ介護を受けている本人にとっても、一時的に環境を変えてプロのケアや機能訓練を受けることでできることが増えたり、ふだん介護を行っている介護者がリフレッシュすることでお互いの関係性が良くなることなどが期待できます。結果的には両者に大きなメリットが期待できるケアといえるのです。

なぜレスパイトケアが必要か

頭を抱え悩む女性の姿

チームで介護にあたるプロの介護職とは違って、家族による在宅介護は代わりがいないことが多く、ゆっくり休むことができません。がんばっても給与などの報酬があるわけでなく、また周囲から評価されることも少なく、身近な人間だけに本人からは文句や愚痴を言われやすい立場でもあります。

そんな状況で介護を続けていると、肉体的にも精神的にも疲労が限界に達して、要介護者と一緒に共倒れ――つまり介護者までもが心身のバランスを崩して病気になってしまうことも懸念されます。そうなると経済的に困窮してしまったり、要介護者に必要なケアができなくなったり、場合によってはネグレクトや虐待につながることも考えられます。

「夫婦のみ」「ひとり親と子」など少人数で暮らす世帯が増えている昨今、一人にかかる介護負担はとても大きくなっています。介護負担が重すぎる状態が続けば、いつか在宅介護は限界となり、崩壊してしまうでしょう。レスパイトケアはそれを防ぐために必要不可欠なケアなのです。

具体的にはどんな方法がある?

【ショートステイ(短期入所生活介護)を利用する】
ショートステイ(短期入所生活介護)とは、特別養護老人ホームなどに短期間入所し、ケアや機能訓練などのサービスを受けながら生活するもの。利用者や家族の状況によって利用日数は異なりますが、平成23年度の調査では4日~14日以内の利用が7割弱と大半を占めています。

ある程度まとまった期間施設に入所して生活するため、介護者は夜間も要介護者の様子を気にせずゆっくり眠ったり、旅行に出かけたりすることもでき、高いレスパイト効果が期待できます。

ただし、急に利用をしようとしてもベッドが空いていないことがあるため、確実に利用するには1~2ヵ月前から予約をしておくのが良さそう。事前に計画を立てて定期的に利用する人も多くなっています。

【デイサービスの夜間延長などを利用する】
基本的には自宅で生活をしながら、日中に施設に通って介護サービスを受けるのがデイサービスです。朝、施設の送迎バスなどで迎えがあり、食事や入浴など必要なケアを受けて、夕方は自宅前まで送りとどけてくれます。

介護者は日中に自由になる時間が持てるので、その間に友人と食事に出かけたり、マッサージを受けに行くなど心身のメンテナンスやリフレッシュに使うことができます。

ただし日中に仕事をしている介護者の場合には、通常のデイサービスではあまりレスパイトにはなりません。仕事から帰ったらすぐにまた介護が待っているからです。

施設によっては、21時頃まで延長利用が可能なデイサービスもありますので、興味がある場合は問い合わせてみるのもおすすめ。夜間延長ができれば、安心して職場の同僚と食事に行ったり、習いごとなどでリフレッシュすることもできそうですね。

休息だけではもったいない?

介護を受け利用者人本人にとっても、レスパイトケアは整った環境のなかでプロのケアを受けられるというメリットがあります。

たとえば、ある程度の期間を施設で過ごし、継続して自分に合った機能訓練を受けたり、自宅での体の使い方を練習したりすることによって、体の機能を維持・改善させることが期待できます。また、専門知識を持ったスタッフとふれあうことによって精神状態が良くなったり、認知症がある人のBPSD(周辺症状)が改善することもあるようです。

ただしそのようなうれしい効果を得るためには、本人や家族がショートステイに対して前向きな意識をもって臨むことが欠かせません。というのも、ショートステイでは短期間で利用者が入れ替わるため、限られた時間のなかで一人ひとりの状態を把握し、それに合わせたケアを行うことには難しさがあります。そのため、施設としてまずは「事故防止」と「安全確保」、そして「現状維持」を優先したケアになることが多いのです。

そんななか本人がショートステイを「家族が休むために行かされている」と後ろ向きにとらえていると、「しんどい機能訓練など必要ない」「やりたくない」と消極的になってしまいがち。そうなると施設もその意向にそって積極的な訓練などを控えることで、単に時間が過ぎるのを待つだけの「お預かり」状態になることも・・・。

もちろん、それでもレスパイトという目的は達することができるのですが、少しもったいないような気がしますね。ショートステイを利用することで本人のできることが増えれば、お互いにとって在宅生活がもっと快適になっていくはずです。

ぜひ本人にもレスパイトケアのこうした一面を知ってもらい、前向きにとらえてもらいましょう。「次のショートステイではこんなことを教えてもらおう」などと目標を持って活用してもらえれば、ケアがさらに有意義なものになるはずですよ。

レスパイトケアは介護者の心に余裕をつくる

海辺でリラックスし伸びをする女性

「レスパイトケアで休息を」というと介護家族の方には、「家族の介護を他人に任せて、自分は遊びに出かけるなんて」と罪悪感をもつ方もいるかもしれません。でもどんなにすごい人も、休みなしにいつまでもがんばり続けることはできないもの。休息は誰にとっても欠かせないことであり、引け目や負い目を感じる必要は一切ありません。

むしろ介護者がしっかりと休息をとることは、心身のコンディションを整え、よりよい介護につながります。「なんだか疲れがたまっているかも」「自分に余裕がなくて、やさしく接してあげられない」・・・もし普段の介護のなかでそう感じることがあったら、遠慮は無用!ぜひ担当ケアマネジャーさんなどに、レスパイトケアのことを相談してみてくださいね。

 

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