血圧は健康のバロメーター。実は低血圧は高齢者で起きやすく、3人に1人に症状が出ると言われているのをご存知ですか?多くの方は病気リスクの大きい高血圧に気を配っており、あまり重要視されていませんが、低血圧はふだんから高血圧の人にも起こる可能性があるため、どんな方にも注意が必要です。今回は高齢者にひそむ低血圧のリスクにせまります。
高血圧の方にも起こる一時的な低血圧
低血圧についての明確な定義はありませんが、WHO(世界保健機関)によると、最高血圧が100㎜Hg以下、もしくは最低血圧が60㎜Hg以下の状態とされています。
低血圧時に現れる症状として、立ちくらみ、めまい、頭痛、倦怠感や疲労感、動悸息切れや胸部圧迫感などがあります。
慢性的に低血圧が続く方で外的要因が思い当たらない場合は、体質や遺伝的な要因である「本態性低血圧」と考えられます。
ところが、血圧が正常または高い人でも、加齢によって血液循環や自律神経の機能が低下することから、日常生活の中で低血圧を引き起こす可能性があるのです。
低血圧の症状は、ちょっとした体調不良のように思えるため見逃されがちですが、立ちくらみやめまいといった症状によって転倒や事故につながることもあるため、低血圧がどのような時に起こるのか、防ぐにはどのようなことに注意すべきなのかを知っておくことが必要です。
起立性低血圧
ベッドから急に起き上がったり、座った状態から急いで立ち上がったりすると、立ちくらみやめまいなどを起こすことがあります。
これは、下半身に集まっていた血液はすぐには心臓に戻りにくく、脳への血液が不足しがちになって起こることや、血圧を調整する自律神経機能の低下によって起こります。
入浴時は温度変化によって血圧が上下しがちなことに加え、血液が皮膚の血管に集まった状態で、立ったり座ったりする動作が多くなります。
とくに浴室は滑りやすくなっているため、転倒などの事故が起きないよう注意が必要です。
このような起立性低血圧は、普段は血圧に問題のない人や高血圧の人でも起こることがあります。慌てて立ち上がることのないように、気を付けましょう。
ベッドから起き上がる時にはゆっくりと、足を動かすなどして血液を体に巡らせるようにしてから立ち上がるようにしましょう。
食事性低血圧
食後のふらつきや立ちくらみは、低血圧によって引き起こされている場合があります。食事をしたあとは、胃や腸といった消化器官に血液が集中します。そのために、脳や心臓にめぐる血液量が減少するのです。
食事性低血圧を予防するためには、ゆっくりと時間をかけて食事することを心がけましょう。1回に食べる量を減らして、数回に分けることも対策のひとつです。また食後は胃腸の消化吸収を助けるため、1時間程度はゆっくりと過ごしましょう。
病気や薬などによっておこる低血圧
日常生活からおこる低血圧のほかにも、脳、循環器、呼吸器、消化器などの疾患から起こる症候性低血圧や、抗がん剤や抗うつ剤、降圧剤を服用している場合に、薬の影響で低血圧になる薬剤性低血圧があります。
これらに該当する方で低血圧の症状が出た時には、自己判断で服薬を停止せず、かならずかかりつけの医師に相談しましょう。
低血圧を予防する方法はあるの?
日常に支障をきたすほどの症状がなければ神経質になる必要はありませんが、定期的に血圧を測定し、数値を把握しておくことは予防の観点でも有効です。
脱水状態になることで体内の血液は減少しがちです。高齢になると、自分ではのどの渇きを自覚しづらくなってきます。声かけを行うことや、食事中などはこまめに水分を摂取することを心がけましょう。
十分に睡眠をとることや、栄養バランスの整った規則正しい食事を心がけること、また適度に運動するといった規則正しい生活習慣は、自律神経を整えることや心肺機能を鍛えることに役立ちます。あらゆる病気を予防する意味でも、生活習慣を整えることは大切です。
安易な判断はせず、重篤化させない心がけを
血圧が正常な方でも油断できない低血圧。高血圧に比べて軽く考えがちですが、事故につながる可能性や、失神などによって重篤化するリスクもあります。
誰にでもおこりうると想定し、タイミングをおさえ、対処法を確認しておきたいものです。
また、低血圧の症状には背後に病気がひそんでいるケースもあるため、気になる症状があれば安易に自己判断をせず、早急に医師の診断を受けるようにしましょう。