認知症の悪化を招く、「言ってはいけない言葉」とは

使えるハウツー

バツ棒を持つ女性
「帰りたいと言われる」「大声を出される」「ないものが見えると言う」・・・そんなとき、皆さんはどうされていますか?認知症の方とのコミュニケーションで難しい点は、「これが正解」というものが決まっていないところ。その人に合わせて臨機応変な対応が必要となるのが、認知症ケアの特徴です。

ただし、「言ってはいけない言葉」というものは、ほとんどの方に共通します。これを言ってしまうと、認知症の状態を悪化させ、介護者との関係も悪くなってしまうというものです。

「急いでいたから」、「イライラしてつい」、「悪気なく」・・・いろいろな状況で、使ってしまっていることがあるかもしれません。代わりにどんな言葉で接するとよいかもご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。

認知症の方に言ってはいけない言葉

片手を前に出している様子
●「それは昔のことでしょう」「さっき食べたでしょう」:本人が信じていることを否定する
「もう仕事なんてとっくの昔に辞めたでしょう」「ご飯はさっき食べたでしょう」「ヘビなんてどこにもいませんよ」など、本人が信じていること、見えているものなどを頭ごなしに否定する言葉はNGです。

たとえ事実とは違っても、認知症の方にとってはそれが真実。それを否定され事実を突き付けられてしまうと、気持ちの行き場がなくなり、激しい怒りにつながることもあります。

まずは本人の世界を受け入れ、「どんなお仕事をされていたんでしたっけ?」「おなかが空きましたか?」「ヘビですか、怖いですね。○○さんはだいじょうぶですか?」など、相手に寄り添う話し方を心がけましょう。

●「ちょっと、何してるんですか!」:本人の間違いを指摘する
歯ブラシで髪をとかしていたり、失禁した便をさわってしまったり・・・認知症の方の行動には驚かされることも多々あります。そんなとき、つい驚いて「何してるんですか!」「ああ、汚い!」などと言ってしまいがちですが、ちょっと待って。強く否定されると本人はびっくりして、余計に混乱してしまいます。

間違いには触れずに「こちらを使うといいですよ」とヘアブラシを渡したり、「ちょっと一緒に手を洗いに行きませんか?」などと声をかけてトイレに誘導しましょう。

●「~しないと悪くなりますよ」「絶対に~してください」:おどす、強制する
「キレイにしないとお孫さんが来てくれなくなりますよ」「ガーゼを交換しないともっとひどくなりますよ」・・・これらはおどして怖がらせることで、言うことをきかせようとしているものです。いったんは従ってくれたとしても、ケアの途中でパニックになってしまうかもしれません。

怖がらせる代わりにおすすめなのが、ケアを受けたくない理由を聞いてみること。「どうして○○したくないのですか?どこか痛みますか?」などと尋ね、嫌がる理由が分かったら、それにきちんと配慮することを伝えます。「痛くないように、そっと剥がしますからね」などと声をかけ、納得してもらったうえで行うようにしましょう。

●「まだですか?」:急がせる
たとえば食事やトイレなど、時間がかかってイライラしたとしても「まだですか」「早くしてください」はNGワード。認知症の方を焦らせてもパニックになるばかりで、良いことはありません。

時間がかかっているときは「そろそろいかがですか?」「お手伝いしましょうか?」「トイレに入ってもいいですか?」などと聞き、了承を得てからお手伝いするようにしましょう。

●「こんなこともできないの?」「あーあ、またこぼした」:バカにする、非難する
呆れた様子の女性
認知症の方には、病気のせいで集中力が低下したり、ものの位置などを正しく認識できなくなる等、私たちには分からない苦労があります。それをバカにしたり、ミスを非難していては、信頼関係をつくることはできません。

失敗があったときも、「場所がわかりにくかったですね、すみません」「すぐに拭きますからだいじょうぶですよ」などと、ていねいに対応しましょう。

何度も同じ失敗をしてしまうときは、やり方を短い言葉で繰り返し伝えたり、絵やジェスチャーを交えて伝えるなど、その人が苦手なことに合わせて工夫してみるのもおすすめです。

●本人がいるのに無視して他の職員に「排便あった?」などと聞く:無視する、もの扱いする
「認知症なのだから、どうせ聞いても分からないだろう」と決めつけていませんか?悪気はなくても、職員同士が本人の目の前で、本人を無視してやりとりしてしまうことがあります。しかし、これはとても失礼なこと。このほかに、何も言わずに車椅子を動かすなど、軽んじた態度をとることもNGです。もの扱いされて傷つき、意欲を失ったり、職員に不信感を持つなど、良いことがありません。

基本的に、本人に確認できることは直接伺いましょう。スタッフに確認するときには、本人のプライドに配慮する気遣いを。

●「どうせできないんだから」「これはしないでください」など:レッテル付けをして、何もさせない
認知症の方は、いろいろなことが昔のようにスムーズにはできなくなっています。それを「どうせできないんだから」「私がやりますから、○○さんは触らないでください」と排除してしまうと、「自分は何もできない、お荷物なんだ」と落ち込み、精神的に不安定になってしまいます。

認知症の方は、段取りや計画が必要なことは苦手でも、昔からやっていたことなど、人それぞれに得意なこともあります。工夫して、その方ができることをやってもらいましょう。

●「ほらほら、がんばって」など:激励しすぎる
認知症の初期の場合、本人自身、自分の物忘れや失敗をとても不安に思っています。ちょっとしたことでも、「これくらいできるでしょう?」「もっとがんばって」などと言われると、自分が否定されたように感じて、動揺してしまうことがあります。

できないことについて激励するよりは「○○してくれてありがとうございます」と感謝したり、「○○ができるなんて、さすがですね」と敬意を払う言葉を伝えるほうがおすすめです。

「ダメ」や「間違っている」など、否定言葉は原則NG

胸に手を添える介護職員
認知症の方に言ってはいけない言葉、それは、本人の思いや行動を否定する言葉。「ダメ」「それは違う」「やめて」など、否定される言葉をかけられるたび、本人は傷つき、動揺し、孤独と混乱を深めていきます。その結果、身近な人に怒りをぶつけたり、つらい環境から逃げだそうとしたりすることで、暴言や徘徊などのBPSD(認知症の周辺症状)が悪化していくことも多いのです。

プロの介護職の方はご存じのことも多かったと思いますが、本人を飛ばして職員間で話をしたり、不用意に励ましたりなどは、心当たりがある人もいるかもしれませんね。

認知症の方との信頼関係は、言ってはいけない言葉に気をつけ、正しい接し方をしていくことで、着実につくっていくことができます。信頼を得られれば、ケアが楽になるだけでなく、どんどん楽しくもなってきます。ぜひ日々のお仕事に取り入れてみてくださいね。

参考文献:「認知症の人の気持ちがよくわかる聞き方・話し方」 監修:鈴木みずえ

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